あらすじ・ネタバレ

◆概要
日本の歴史上でも名君と名高い天智天皇(中大兄皇子)と天武天皇(大海人皇子)が想いを寄せた、絶世の美女で知られ優れた歌人でもあった額田王…飛鳥時代の大和王朝を舞台に彼女を巡る兄弟の争いと、それぞれの人生を劇的に描いた一大歴史物語。

◆おすすめする人
・歴史大河ロマンが好きな人
・飛鳥時代の歴史に興味がある人

◆あらすじ
狩りに出かけた中大兄皇子は森の中で草遊びをしていた一人の少女を見かける。
同行していた中臣鎌足が声をかけようとするが、中大兄皇子は少女が醸し出すあまりの清らしさを穢すことを恐れ鎌足を止める。
日暮れになり近くの鏡氏の屋敷で一夜の宿を取ることにした中大兄皇子達は、そこで昼間見かけた少女額田王と再会した。
中大兄皇子の弟である大海人皇子は一目で額田王に惹かれ、自分の妃になるよう申し入れるが、額田王は、自らは巫女であり、夢で神に遣わされた神馬が自分の夫であると語って大海人皇子の求婚を退ける。
その様子を笑って見ていた中大兄皇子は、額田王に巫女であるならば自らの未来を神に聴いてみよと命じるが、額田王が占った自分の一生を聞いて顔色を変える。
額田王が見たのは王座につき、多くの血を流し嵐を起こす中大兄皇子の姿だったのだ。
史上名高い大化の改新を起こして朝廷の改革を進め、中央集権国家を作り上げた天智天皇と、その弟で天智天皇の改革を引き継ぎ同じく名君と呼ばれた大海人皇子が愛した美しき女流歌人額田王の愛の物語が幕を開ける！

◆おもしろポイント
大化の改新の中心人物としても名高い中大兄皇子と大海人皇子の兄弟が深く愛した額田王との愛を壮大なタッチで描く歴史物語。
二人の皇子に愛されるのは、これまた歴史に名高い女流歌人の額田王。
巫女として生きることを定めとする額田王は、賢く気高く宮廷一の美女としてその名を馳せているが、時折見せる無邪気な振る舞いとの落差が魅力的で、時の天皇として偉大な功績を成し遂げた皇子達に愛されたのも納得の人物だ。
海のように深く温かな愛を注ぐ大海人皇子と、燃えさかる炎のように激しく熱い想いをぶつける中大兄皇子…しかし愛に溺れることなく、自らの存在意義を見出し、運命を切り開いて生きていく額田王の姿は、女性の一つの理想だといえよう。
そんな額田王が身分という重い鎖に縛られ、思いのままに愛を貫けずに、二人の皇子の間で深く苦しむさまもまた女性ならば理解できることかもしれない。
三人の愛がどんな形で結末を迎えるのか、悠久の歴史に思いを馳せながらこの物語を読み進めてほしい。